1 過払い金・任意整理とは
任意整理とは,債務が支払えなくなった場合,弁護士が消費者金融業者や信販会社,銀行等と交渉することにより,法定金利よりも高い金利で返済していれば,法定金利で残元金を決め,また支払いに際して,利息をカットしてもらうよう交渉を行うことをいいます。
任意整理のうち,特に,法定金利で引き直し計算をした結果,当初残っていた債務が完済になっているにも関わらず,約定での弁済をし続け,支払い過ぎた金利の返金を業者へ求めていくことを過払い金の請求といいます。
法定金利とは,100万円までの借入について年18%,100万円以上の借入について年15%の金利をいいます。
すなわち,日本国内でのお金の貸し借りについて,利息制限法という法律で利息の上限を決めているのです。この法律は,強行法規といい,個人と業者間,個人間を問わず,また,当事者同士が利息制限法超過金利でのお金の貸し借りに合意をしているかを問わず,強制的に適用されることになります。
しかしながら,従前,消費者金融業者,信販会社からのキャッシングについて,約定といい,顧客と業者との約束の金利が上限29.2%までで取引をされていたケースが多く存在していました。もちろん,利息制限法超過の金利をとることは法律違反になります。
そのため,利息制限法超過金利について,払い戻してもらう過払い金請求という形がとれることになるのです。
過払い金請求について,債務が残っていて引き直し計算をしたら過払い金になっている場合に請求できる他,債務を完済している案件であっても過払い金の請求ができます。
2 過払い金・任意整理ができる場合について
任意整理がどのような場合にできるかについて,特に,こういう状態でなければいけないというような厳密なものはありません。
ただ,借入を始めてから2,3ヶ月しか経過していませんというような場合,業者に応じてもらうのが難しいかもしれません。
これに対し,借入を始めてからある程度の期間継続して,弁済を継続している場合であれば,支払不能のように,破綻しているようなことは条件にはなりません。
ひとつの基準を考えるのであれば,借入が増えて,給料から弁済を行ってもほとんど減らないけれども,破産するほどでもないというような場合が任意整理が適する場合です。
また,過払金が発生しているようなケースも任意整理(過払金請求)が適しています。過払金請求ができるのは,法定金利(100万円までの借入について年18%,100万円以上の借入について年15%)を超える借入を長期間(概ね5年以上)繰り返している場合になります。
当法律事務所でご依頼を受けて回収した経験上,割と若いころから取引をされている方の場合,30代の方で過払い金100万円前後,40代の方で過払い金が100万円から200万円,50代から60代の方では200万円から500万円程度の過払い金が発生している可能性があります。
具体的に,いくら過払い金が発生しているかについて,取引履歴の開示を受けて,利息制限法で引き直し計算を行う必要があります。
取引履歴の開示請求は,ご本人からもできますので,取引履歴をお取り頂いている場合,当法律事務所までお持ち頂きましたら,利息制限法での計算を行うサービスをさせて頂いております。
3 過払い金・任意整理のメリットについて
任意整理のメリットについて,任意整理を行うことにより,法定金利を超える高い金利で取引をしていた場合,債務の元金が大きく減る可能性があります。
また,法定金利を超える借入を長期間継続してきた場合,任意整理により,債務がゼロになり,過払金の返金を受けられる可能性もあります。
加えて,任意整理を行うことにより,債務が残ったとしても,分割払いの交渉を行い,その際,残元金に対する金利をカットしてもらえる可能性があり,カットまでいかなくても,現在の借入金利よりも低い金利にしてもらえる可能性があります。その結果,従前の約定金利で支払っていた金額よりも,毎月の返済額がかなり低くすることができ,生活が安定してくるでしょう。
過払い金請求のメリットについて,債務が残っている方であれば,債務の支払義務がなくなり,加えて,業者から,過払い金の返金を受けられるという二重のメリットがあります。
完済案件で過払い金の請求を行う場合,単に,過払い金を返してもらえるというメリットのみで,デメリットは全くありません。弁護士費用が発生しますが,当法律事務所では,着手金,報酬金ともに回収した過払い金からお支払い頂く形になっていますので,持ち出しが一切なしで過払い金の請求を行うことができます。
4 過払い金・任意整理の手続きの流れについて
1 任意整理の手続きの流れについて
まず,弁護士から,各債権者に対して,受任通知を発送します。
そして,各債権者から,取引履歴を提出してもらい,法定金利よりも高い金利での借入があれば,法定金利での引き直し計算を行い,現在の総債務額を把握するようにします。債権者からの受任通知が届くまで,早ければ,2週間ほど,通常で1ヶ月,信販会社など遅いところで2ヶ月以上かかる業者もあります。
利息制限法で引き直し計算をした結果,過払い金が発生していることが分かれば,その時点で,業者に対し,過払い金の請求を行うことになります。
これに対し,債務が残る場合,全社からの届け出を待って,債務総額を把握します。
その後,債務総額に対し,返済期間を短くて3年,長くて5年として,3年の場合36ヶ月で債務総額を割った金額を,5年の場合60ヶ月で債務総額を割った金額を毎月の弁済額として,和解の交渉を行います。
その結果,各債権者との間で個別に,債務総額がいくらで,毎月何日にいくらを支払うのか,初回支払い日をいつにするのかなど,決まれば和解が成立します。
弁護士が受任してから和解が成立するまで,概ね3ヶ月かかります。その間,債権者への支払いがストップしており,和解成立後,支払いが再開することになります。
2 過払い金請求の手続きの流れについて
過払い金請求の手続きの流れについて,受任通知発送,取引履歴取り寄せ,利息制限法に基づく引き直し計算までは,任意整理の流れと同様です。
過払い金が発生していることが判明すれば,その段階で,弁護士から,業者へ,過払い金の返金の請求書を送ります。その後,業者の担当者との間で,電話で,過払い金をいつ,いくら返金してもらうかという交渉を行うことになります。
利息制限法で過払い金が発生しており,業者へ請求を行っても,業者からすんなりと全額の返金を受けられるというケースは少なく,過払い金額の減額を求められることになります。
業者の減額交渉に対して,なるべく請求金額どおりに支払ってもらえるよう交渉を重ねることになりますが,業者の担当者の裁量から,これ以上,金額が上がらないというところまで交渉した後,満足のいく金額であれば,和解を成立させることになります。特に,問題がなければ,弁護士へのご依頼から和解成立まで,約3か月で対応ができます。
これに対して,請求金額と業者が提示する和解金額との開きが大きく,和解に至らない場合,裁判を行い,増額を図ることがあります。裁判を行えば,和解までの期間が半年程度かかることになります。